ウエスタン馬術

ウエスタン馬術は、400年前に、初期のスペインの入植者が米国に持ち込んだ馬文化と馬装を反映し、それを連綿と受け継いできたものといえる。ただし、ほかの馬術と同様、さまざまな技術を習熟し、独自の馬術の様式を築き上げてきたことによって、広く世界に認知されるようになった。

調教原則

 最上級のレベルのウエスタン馬術は、調教原則の基本に徹底し、忠実にそれを身につけていなくてはなしえないという点で、ヨーロッパの古典馬術と肩を並べる。
 ウエスタンであれ、ブリティッシュであれ、調教の意図するところは同じで、身のこなしの軽さ、従順性、リラックス、柔軟で臨機応変なバランス感覚を確立することにある。両者の相違は、目的と方法、および重きをどこに置くかという点にある。
 ヨーロッパの馬術は戦闘を起源としている場合が多いが、ウエスタン馬術にその要素はない。ウエスタン馬術の収縮姿勢は、牛追いのときの扶助(ウエスタン用語では「キュー:合図」)と制止の際の扶助との複合によって得られる。制止の扶助は、ほとんどが拳から大勒頭絡(小勒馬銜と大勒馬銜が一体になったもの)を介して伝えられるが、体重の移動でそれをサポートする。
 ウエスタン方式は、牛を扱うということを背景に、さまざまな仕事をこなす馬に調教するという実用的な目的があるため、スピードと最高レベルの能率と技術が求められることが多い。
 バランスがとれているという点では、ウエスタンの馬はヨーロッパの馬に引けを取らないが、外見はかなり異なる。
 気品や収縮姿勢の代わりに、体を低くした伸長姿勢の歩様が求められるが、それには飛節を上手に使う必要がある。さらに、片手で手綱を取り、やや”たるませた状態”で騎乗するが、こうした方法は、古典馬術では邪道とされる。
 ウエスタン歩法を特徴づけるのは、ジョグ(ゆっくりした速歩)と滑らかなロウプ(ゆっくりした駈足)である。基本として求められるのは、横方向へ楽に移動する動きのほか、バック(後退)と後躯を中心にした回転である。
 高度な動作には、跳び上がっての踏歩変換(リードチェンジ)、180度向きを変えるロール・バック、スピードのある状態で行うスピン(ウエスタン式ピルエット)がある。
 そのほか忘れてはならないのが、スライディング・ストップである。これは速い襲歩から、後肢を30フィート(9m)程度スライドさせて停止するという技である。

証明
証明
ウエスタン馬術の妙味を知るには、ロディオ・スポーツのバレル・レースを観戦するに限る。手綱による制御は最小限で、馬は危険なまでの速さで砂ぼこりをあげながらドラム缶を回るが、完璧なバランスが保たれている。
低く長く
低く長く
トレイル競技に臨んでいるクォーターホース。リラックスした状態でポールを横切っているが、バランスを保ちながら体を伸ばした低い姿勢で行くことが求められる。騎乗者は片手で軽く手綱を持ち、その重さで馬とのコンタクトを保ち制御する。
停止!
停止!
スライディング・ストップは、ウエスタン馬術を代表する技といえる。片手で騎乗しながらこの動きをするには、完璧な技術が必要とされる。