妊娠と出産

牝馬は通常、生後15〜24か月で性成熟を迎えるが、これより遅いこともある。2歳馬でも出産することは可能だが、3歳馬のほうが望ましい。

発情期の到来

 初春から始まり秋になるまで、牝馬は通常18〜21日間隔で発情を繰り返す(フケがくるともいう)。発情は5〜7日間つづく。この期間中は、牝馬は牡馬を受け入れる。発情と明らかにわかるサインは数多くみられる。
 ただし、それらの発情兆候は必ずしも同時に出現する訳ではない。牝馬は苛立や情緒不安定な様子をみせ、普段よりも仲間のそばにいたがるようになる。尻尾を激しく頻繁に振り下ろし、陰核(外陰部にある小さく、感覚が鋭敏な器官)を突き出す。少量の尿を頻繁に排出し、膣の周辺部には粘液が認められる。
 直腸検査で、牝馬が発情周期のどの時期にあるかを診断することは可能だが、牝馬が交尾可能かどうかを知る最も確実な方法は、牡馬を近づけてみる、すなわち当て馬をしてみることである。
 馬の生産牧場では、普通、牝馬をパッドで覆った仕切りの一方につなぎ、仕切りの反対側に牡馬を連れてくる。この仕切りは馬がお互いにけがを負わないようにするためのものである。牡馬を受け入れる準備ができていれば、牝馬は交尾の姿勢をとり、尻尾を片側に寄せる。準備ができていないときは、牝馬は牡馬に向かって歯をむき出し、咬んだり蹴ったりしようとする。

妊娠と出産

 牝馬の平均的な懐胎期間は11か月と数日である。明らかに個体差が認められるが、一般に雄の子馬の在胎期間のほうが雌よりも長い。雄の子馬がおよそ334日、雌の子馬は332.5日だが、これらの日数には前後9.5日の変動がある。
 妊娠末期には、サラブレッドのような改良の進んだ品種に対しては、自分で何でもできるポニーなどよりも注意を払う必要がある。改良の進んだ品種の馬の出産は、監視テレビカメラ付きの分娩専用の馬房で行われることが多い。
 ポニーなどはたいてい野外で出産し、問題が生じることもめったにない。ポニーの出産は短時間で済んでしまう。まるで出産が長引くと天敵に襲われる危険が増す野性下の出来事のようである。

陣痛と出産
①破水が起こると、母馬は横になり陣痛の痛みが増すごとに、ひどくもがきつづける。また、ときどき大きくうなり声をあげ、出産の瞬間が近づくにつれ、大量の汗をかく。

妊娠と出産
②正常分娩では、弛緩した外陰部から子馬の前肢がまず現れる。前肢は透明な膜で包まれており、出産が進むと破れてしまう。
妊娠と出産
③頭部は伸ばした前肢の上に乗って出てくる。肩が現れると、最も重い部分が出たことになるため、残りの部位は楽に出る。この時点で鼻を包んでいた膜が破れ呼吸を始める。
妊娠と出産
④子馬はすっかり母馬の体内から外に出てしまう。この時点でへその緒が切れることもある。自然の「血液弁」が閉じる。これにより胎盤から子馬への血液の流れも、その逆の流れも止まる。
妊娠と出産
⑤出産後まもなく、母馬は立ち上がる。へその緒がまだ切れていない場合でも、このときには切れてしまう。30分程度、母馬は子馬をなめつづける。母馬は自分の子をそうやって温める。
後産
後産は、出産の4時間後までには排出される。この時間に排出されないときは獣医師による診察が必要である。もし後産が母馬の体内に残っていると、敗血症を起こすことがある。
妊娠と出産
⑥30分後、子馬は鼻先で母馬を探り始める。初乳(子馬が最初に飲む乳)は非常に重要である。この乳は抗生物質としての働きをもっている。また腸の煽動運動を起こさせることで、胎便の排出を促す。